参加者6名の皆さんとともにはじまった今回の「万葉集への誘い」、テーマは〝相聞歌〟。
相聞歌は皆さんご承知の通り、「恋の歌」です。

罪状がはっきりしないにもかかわらず流刑にあった中臣朝臣宅守(なかとみのあそんやかもり)と都に残された狭野茅上娘子(さののちがみのおとめ)との間で交わされた、引き裂かれながらも想い熱く綴られる相聞歌を取り上げました。

七夕の伝説の彦星と織姫のように、引き離されてしまった恋人同士の物語は、時代に関係なく、心を熱くしますが、万葉集には、離れ離れになった二人の間で何往復も交わされた歌が数多く(宅守40首、娘子26首)取り上げられています。


今回の室礼 テーマ:「乞巧奠」(きっこうでん)
男性は学問や筆の上達を願って、女性は針仕事や芸事の上達を願って、文鎮には「何事も成す」に掛けて茄子を。古来天皇陛下は梶の葉に勅命をしたため、言霊を実現させたと言われていることから、奉書紙を梶の葉にかたどっています。
※「乞巧奠」は、七夕に行われる中国発祥の年中行事の一つ。女性達は織女にあやかって裁縫の上達を祈願したといわれている。

会ではまず、二人の歌から心情を感じ取り、感じ取ったことを皆さんでシェアし合うことから始めました。
その上で、宅守さんの流罪の背景になにがあったのかを、改めて歌を読んでみて感じていただきました。

罪状が明確でないのになぜ流罪にあったのか?

記録に残されていないことを探ることは想像でしかないわけですが、それでも残された歌から何か探ることはできないだろうか?皆さんと分かち合う中で、

-その時の社会情勢はどうなっていたのか?
-その社会情勢の底流にあったものは何なのか?

などさまざまな疑問が生まれ、自由に発想を膨らませながら考えていきました。

そのカギを解くのもやはり「歌」だった!

というのはあくまでこの会の中での結論であるわけですが、残されたわずかな字数に託された想いを感じながら、若い(かったであっただろう)宅守さんは時代の逆風にさらされながら、罪を犯してしまったのかもしれないなあ、という仮説が生まれたりもしました。

その時代の流れの底流を見ていったときに、今の時代も同じようなことは日常的に起きているのだろうな、と感じざるを得ませんでした。

今回は休憩時間にお抹茶と和菓子をいただいたのですが、参加者のお一人Wさんはなんと茶道家。贅沢にもお抹茶点てて頂きました。日常では味わうことのできないの至福の時間は、とても和やかで幸せなひとときとなりました。


Wさん、素敵なお茶碗もご持参いただきありがとうございました。今後も『お抹茶タイム』は継続するかも?しれません。

「万葉集」と聞くと、「難しそう」「取っつきにくそう」と感じる方もいると思います。参加された方も、初めはそのような印象を持たれていた方もいらっしゃいました。
しかし、一度でも参加するとそのイメージは変わってしまうようで、皆さん一同に、

「楽しかった!」
「万葉集のイメージが変わった!」
「もっと学びたい!」

との感想を伝えてくださいます。
(参加者の感想は最後にご紹介しておりますので、ぜひご覧ください)

万葉集は現存している最古の和歌集であることはご存知の通りで、「歌の総結集」「日本最大の古典」といわれることもあります。万葉集の歌に触れることは、いわば私たちの何代、何十代も前の日本人の心と、時代を超えて触れ会うことになります。

そこには、私たちが過去に「お勉強」として学んだ古典とは全く違う姿があり、知識がなくても、苦手意識があっても、触れることでなにかしら伝わってくるものがあるのが、毎回不思議だなあと感じています。


解説するときにはこうなりますが、「講義」「勉強」という雰囲気はまったくないんですよ。

だからこそ、という例にだすのは少し違うかもしれませんが、今でこそ毎回参加してくださるNさんAさんは、もともとは大の古典嫌い(笑)。そんな彼らの口から常々出るのは、

「万葉集を知らないなんて勿体ない」。

「万葉集への誘い」のキーワードは『楽しむ』です。

歌を楽しむ
会話を楽しむ
知ることを楽しむ
日本を感じることを楽しむ

「万葉集」の知識が全くない方にこそ、ぜひご参加いただき、感じて楽しんでただきたい会です。


左:インディゴブルーのワイングラスペア 微笑みシリーズ(初花彫り、登録商標)。右:瑠璃色と紫の一口ビールペア 熨斗目(のしめ)吉兆紋。ペアグラスは共に夫婦の姿を現しています。

ということで今後の予定ですが、次回は9月2日『大津皇子と大伯皇女』を取り上げます。
詳細は、後日あらためてお知らせいたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

舟橋初花

 

●○参加者の皆様のお声をご紹介〇●

* 初めての参加でした。歌を実際に声を出してよんでみて、その後にその意味を追っていくことで、最後まで集中して歌に意識を向けることができました。
やはり声に出してこその日本語だと思いました。
ご用意された資料や講義内容の水準は、市井のカルチャーセンターの水準を大きく超えていると思いました。
まっ茶やたなばたやガラス工芸など、いいなあと思いました。

*単なる相聞歌ではなく、その時代背景を鑑みると深くとらえられるものがあるなと思いました。
この時代 何事も何か背景、底流に流れているものが必ずあるというのは、今の私達の物事、人との関係も同様で、いかにそこを汲めるか…も新たな視点かと思いました。(Wさん)

*歌に思いを詠むという日本文化と日本人の感性はやはりすばらしい!
天皇をめぐる時代背景がとても興味深かったです。あと当時の飛脚システムのすごさ!日本ってスゴイ! (Nさん)

*天皇家の系図が複雑で、その時々の権力争いなど、非常に興味深かったです。
天皇がいままで続いていることにおどろきです。歴史を知ると万葉集もまた違った内容に見えてきます。(Yさん)

*万葉集の背景まで分かり易く説明していただき、当時の時代背景を深く理解することが歌をよみとく大きな助けとなりました。
当時の宮中での様々な人間模様、そこから今の御代に通じるものを感じたり、今の御代へのメッセージとよみとくことも出来るかもしれないと思いました。(Mさん)