言霊学会設立にあたって

【言霊学会】は、ヘブライ研究会を前身とし、1965年(昭和40年)10月30日に小笠原氏を中心に発足した結社、第三文明会の歴史を継承すべく、和器出版株式会社の設立と共に和器出版内に設置されて発足することとなった。かつて小笠原孝次氏を中心に設立された第三文明会は、銀座二丁目のレストラン八眞茂登(やまもと)を会場にして、月一度のペースで会合が開かれていた。第三文明会の結社の目的は、第三文明会・会報の第二号「発會式報告」にて、次のように述べられている。「この日、日本の眞姿、眞態、眞諦を開顕宣布し、歴史を通じて予定されている新時代を全世界の上に実現する先駆者の使命を狙った団体が発足することも何かの縁かもしれない・・・」と。
近代における言霊学の発祥は、書道家で神代文字研究家でもあった山腰弘道氏が明治天皇と共に宮中賢所にあった文書と、昭憲皇太后の実家で一条家からもたらされた文書から言霊の法則を学び取り研究を始めたことに始まる。厳父山腰弘道氏から継承された言霊の法則を『言霊』として著した山腰明將氏は、1951年、自動車事故により非業の死を遂げられた。しかし、その後、山腰明將氏の意志は小笠原孝次氏に継承され、言葉に生命が宿るとする言霊学の考え方は、小笠原孝次氏によって西洋哲学と照らし合わされることにより哲学的な体系化が試みられ、その研究成果は古事記解義書として、言霊三部作(『言霊百神』・『言霊精義』・『言霊開眼』)を著されるにいたった。
小笠原孝次氏は1982年に享年79歳で帰幽されたが、七沢賢治と共に創設した言霊神社に小笠原孝次氏の意志は引き継がれた。そこで、七沢賢治は、まず言霊学の整理をするにあたり、日本語の各音の持つ潜在的意味や、日本語と日本人の精神性・霊性との関わりについて、それらを情緒論ではなく「言語エネルギー」という具体的な機能として把握しようと考えた。つまり、自然科学を前提にしつつ、より体感的な学問として捉えようということであった。その体感が身につき、心に染み渡ることで、日本人特有の心の在り方が自然発生的な行動規範として立ち現れてくると考え、言霊学を通して「古層和語圏」へアクセスすることは、日本の文化を守ることにつながると確信した。
そして言霊学と、量子論・量子力学との間に類似性を見いだしたことで、言霊学は自然科学の分野ともアナロジー的に連携するところとなった。つまり、ここにおいて言霊学は哲学となり科学となったのである。
日本人としての目覚めのテーマは、日本語のもつすばらしさに日本人自身が気づき、日本語のすばらしさを世界に広めていくことである。日本語でコミュニケーションすることにより、現在、世界中で頻発しているテロや宗教問題や民族間などのさまざまな紛争が解決する可能性があるように思える。そのためには、言霊学という学説をもう一度新たな目で見直さなくてはならない。
言霊、特に「霊」という言葉が人々に与える印象や先入観により、そこには多くの誤解が入り混じっているようである。また言霊という言葉の響きには、ある種の権威的重みも感じられる。それにより言霊を必要以上に崇め、あるいはそのように誘導し、「公」とは異なる「私」の世界に利用しようとする者も出てきた。
現代は情報化社会の成熟期ともいえる。それにより情報の中味も、より客観的に精査される時代になった。いわゆる一神教的、主観的な情報に対して人々が冷静な目を持てるようになった時代という意味である。そこで改めて重要なことは、情報や学問の客観性を問うという姿勢であり、そこを超えられないものは汎用性を失いやがて消えゆく運命にある。よって、この言霊学の世界を、人文・社会・自然科学といった幅広い見地から新たに議論できる材料を提供しようとすることが【言霊学会】の設立目的であり役割である。
古代ギリシア語に「ロゴス」という言葉があるが、その意味は「言葉や意味」という範囲にとどまらず、「宇宙万物の根本原理」にまで及んでいる。つまり言霊とはロゴスであり、言霊学とはいわゆるロゴスを扱う学問であるから、その全体像をロゴソロジーと表現することもできる。このロゴソロジー(LOGOSOLOGY)が世界的な研究の対象となることが、【言霊学会】の願いなのである。
言霊学を一部愛好家のものとせず、秘密主義を解いて万人のものとするためには、それを学問にし、科学にする必要があるのである。つまり、それは霊も魂も科学で説明できるようにするということである。小笠原孝次氏の遺言を通じ、既に【言霊学会】ではその大半の作業を終えている。すなわち、この科学性という万人が認める普遍的素地があることで言霊学はどの時代にも通用する万能のツールとなるのである。この新言霊学こそがロゴソロジーであり、四次元の世界を超えられない量子力学の矛盾を解く待望の学問となる。遅かれ早かれ、世界中の研究者がそれに取り組まざるをえない状況となるであろう。
これまでの歴史の繰り返しが証明しているように、既に民族主義の台頭が世界のあちこちで起こっている。言い方を変えれば、それは言語民族主義ともいえるもので、いずれ戦争や疫病、民族精神の崩壊により言語の衰退や言語危機を引き起こすことになる。しかし、言霊は民族主義を助長するものではなく、むしろ民族の崩壊を防ぐ唯一の手段となりうるものである。そのためには信仰や宗教ではなく科学としてそれを表明する必要があるのである。こうした世界の状況の中で、ついに事が始まったといえる。
事は「言」でもある。言霊学では言葉により事が起こるといっている。言霊が科学となる日、それは人類が自らの手で神を掴つかむ日といえるかもしれない。第三文明会は【言霊学会】と名称を変え、情報誌「和器」の発刊と共に、2016年3月28日、市ヶ谷の地に、和器出版株式会社内に、立ち顕れたのである。