人生で初めて、オープン戦が待ち遠しい!と思っています
みなさ~ん、待ちに待ったプロ野球のキャンプが開幕となりましたね!
ん? ダレが待ちに待ったの?――ってそうですよね。
唐突に申し訳ありません。かくいう私も、和器ブログでプロ野球のキャンプのことを取り上げることになるとは‥‥‥と意外な展開に驚いているところなのですが。
きっかけは、昨年11月に弊社から発刊された身体技法研究者・甲野陽紀さんの著書『身体は「わたし」を映す間鏡である』と、プロ野球の世界をつないでくださった方がいらっしゃったこと。その方とは、今シーズン読売ジャイアンツの一軍守備走塁コーチに就任された鈴木尚広(すずき・たかひろ)さんです。
ある方の紹介で『身体は「わたし」を映す間鏡である』を手にした鈴木コーチ。これは自分の走りの研究にも役立つ!と直感。その話が以心伝心、伝わってきたことから、「ではぜひ、鈴木コーチを甲野陽紀さんにご紹介する場を!」と、弊社編集部がお二人の間を取り持つ役を買ってでることになった‥‥‥というわけなのでした。
さて、当日。顔を合わせたお二人は話もそこそこに、すぐに一対一の特別稽古へ。
「走者は構えたとき、注意はどこへ向けたらいいんですかね?」
「一塁にいる走者なら構える前にまず二塁へ注意を向けたいですね」
「二塁へ注意を向けてから構える?」
「そうです。まず二塁へ注意を向ける。それから構える。その二つをきちんと分けたほうがスタートが切りやすくなると思いますよ」
「なるほど!」
鈴木コーチ、理解の早さと的確さはさすがというほかありませんが、甲野陽紀さんの本を読んだあと、自分が大事だと思う点をすべてノートに書き出していたとも聞きました。この研究熱心さは現役時代からだそうで、毎回の自分の走塁に対して、結果の把握、分析、課題点の発見など細かく研究なさっていたとのこと。
そこに話を向けると
「できなかったから考えるしかなかったんです」
と苦笑いする鈴木コーチでしたが、
現役時代は、ファンから「神走塁」といわれるほどの走りで魅了した代走のスペシャリストして活躍した鈴木尚広さん。二軍と一軍を行き来しながら活躍の機会を狙っていた若手選手時代、稀にみるその〝足の才能〟を見抜いて一軍に抜擢してくれたのが今季から三たびジャイアンツの監督として指揮をとることになった原辰徳監督だったといいます。
その後の鈴木尚広選手の活躍ぶり、残した球史に残る数々の盗塁記録を見るだけでも、原監督の才能を見抜く目の高さがわかりますが、実は原監督の慧眼が見抜いていた才能がもう一つあったのです。それは、鈴木尚広さんの指導者としての才能!
「おいタカヒロ、そのうち呼ぶからコウノハルノリさんの本を読んでちゃんと研究しておけよ」「わかりました、ボス!」という会話は私の妄想ですが、きっとそれに近いやりとりはあっての今回のコーチ抜擢だったのではないでしょうか。
その後も熱心に甲野先生の話に耳を傾け、注意の向け方、言葉の使い方の違いで身体の反応の異なり方を身体で会得しようと何度もその動きを反芻されていました。野球関してはプロではない甲野先生のお話を、積極的にメモを取りながら聞かれていた姿に、一流の選手とはこういうものなのだということを目の当たりにしました。
キャンプ直前にも関わらず、お時間を割いてくださったことに恐縮していると、
「キャンプ前にお話を聞くことができて、本当によかったです」
とどこまでも謙虚な姿勢の鈴木コーチ。
その謙虚な言葉の中に、野球に対する熱い想いと飽くなき向上心がぎっしりと詰まっている!——そんな印象も受けました。
身体能力の高さはもちろんのこと、自分自身で緻密に分析し理論的に組み立てた走りの方法を明確にもちながらも、甲野陽紀さんが発見した新しい見方や方法を次々に取り入れていく鈴木コーチの柔軟さに、甲野陽紀さんもよい意味の刺激をもらったと終始笑顔。
「冷静さとハートの温かさを兼ね備えた鈴木コーチにはぜひ将来指揮官になってほしい!」とは編集部一同の一致した意見です
野球にはあまり明るくない私ですが、「今シーズンのジャイアンツに、走れる選手が続々現れるかも」と思うと、すでに前のめりでオープン戦が待ち遠しくなっています。
今年はぜひ、みなさんも東京ドームに足を運んでみましょう!
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